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April 28, 2005

歴史的建築を残すという事は

 歴史的建造物と言うとピラミッドや万里の長城のように、巨大建築が悠久の歴史を越えて今に残っているイメージを皆持っていると思う。しかし、意外と言うか考えてみれば当然というか今、世界遺産などに登録されている建築物の中で作られた当時の姿をとどめている建物の方がむしろ少数なのである。特に第2次対戦の戦火で国土が戦場になった、ヨーロッパ諸国はそれが顕著で例えばロシアのクレムリンやペテルゴフのボリショイ大宮殿などは、それぞれナポレオン戦争とナチスドイツの侵攻によって一度灰燼と化したのを、再び国民の努力によって復興されたものなのである。
 特にすごいのはボリショイ大宮殿(注)で、900日に及ぶドイツ軍の占領期間中には宮殿の庭園は縦横無尽に塹壕が掘られ、木々はすべて切り倒され、噴水やほとんどすべての配管は破壊され、疎開が遅れた芸術品や彫刻・装飾群はすべて略奪されてしまったのを解放後、まだ戦争が終わる前から市民のボランティア達も加わって10年以上かけて元の美しい外観に戻されたのである。
 こうしてみると、歴史的建造物を残すのは略奪や破壊を免れたかよりも、人々がどれだけその建物を愛して残そうとしているかが重要なことが判ってくる。そして逆の例として、たとえ戦災や災害を免れても人々が感心を持っていないと、せっかくの建物も取り壊されて後にどこにでもあるような退屈なビルに埋め尽くされていってしまうと言うことだ。

 はたして私たちの周りの建物はどうだろうか? 京都の景観規制が弛められ、古くからの木造建築の間から高層ビルがにょきにょき生えている話を聞く度に、再建されたヨーロッパの町並みのことを考えてしまうのである。

注:ペテルゴフの夏の宮殿ことボリショイ大宮殿についてはロシア サンクトペテルブルグ情報:ロシアン・リポート(個人でやられているblogです)が写真が豊富だったのでこちらにlinkを貼らせてもらいました。

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