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June 18, 2005

シミュレーションがオリジナルになる日

 アグファ破産のニュースに続いてとうとうコダックがモノクロ印画紙の生産を止めるようだ。暗室作業が好きな自分にとっては残念なニュースだ。幸い私が使っているのはフィルムはFUJIFILMのACROS、印画紙はGEKKOのRCペーパーなので直接の影響はないものの、数年後にはFUJIFILMも生産を止めてしまいそうで落ち着かない。そのときにはいよいよハンガリーのフォルテパンやロシアのクォーツクロームやオルヴォなどを使うしかないのだろう。それにしても今でも美大や専門学校の写真の授業ではモノクロフィルムを使って現像・プリントのコースが行われている筈だが、こうした所はどうなるのだろうか?
 そういえば以前に若い人にPhotoshopを教えていて気づいたのだが、彼らの中ではPhotoshopの機能の多くが写真の暗室作業を模したものであると言う意識は全くなく、「なんでこうなってるか分からないが」ある機能を使うとこうした結果が出ると言うブラックボックス化したツールとしてとらえていて衝撃を受けた事がある。
 ある程度、暗室作業をしたことのある人なら分かるだろうが、Photoshopの機能は単純に明るさや色味を変えるものではなく、その多くが本物のフィルムの特性を精密に再現した機能になっている(例えば“焼き込みツール”などで単純に暗くなるのではなく、微妙に焦げたような色味に変化していく所などは典型的だ)。そのためにフィルムや暗室作業をしたことのある人間にとっては直感的に分かるものになっているし、これまでのアナログの素材に置き換えても(プロから見れば違いは一目瞭然にせよ)すんなりなじむようになっている。
 しかし、いつの間にかこれまでのアナログ素材のシミュレートの方が主流になり、アナログを模した機能の多くが、どうしてこんな風になってるか分からないがとりあえず色味や明るさなどを変えることが出来るらしいので使っていると言う状態になってしまっていたのだ。きっともう少し経つと、古い慣習や儀式のように「なんか直感的じゃないし、変だよね」などと言いながら使われるようになってしまうのかも知れない。そのときにフィルム世代の私たちは「昔、フィルムと言うのがあって、この部分はその名残なのじゃ」と言いながら過去を懐かしむことになるのだろう。
 かくして先人が苦労して実装したフィルムのシミュレーションは、盲腸のようになんだか分からないが昔からあるものとして、意味を問われることも理解されることもなく残り続けることになるのだろう。

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