色の言葉
今回は外国における色の話。
先日、ロシア語には青に当たる語が2つあると言う話を書いたが、このように特定の文化に置いて、高貴だったり美しいとされている色は沢山ある。
例えばロシア語では「赤い」と言う言葉красныйには「美しい」と言う意味が含まれていて、現に「美しい」と言う意味のкрасивыйは赤いと言う単語から派生している。また今では使われてないそうだが「赤い女」と言う呼び名は「美しい人」と言う意味を持つそうだ。
イスラム文化に置いては水がとても貴重だった事から、「青」أزرقُ(←注:アラビア語なのでブラウザによっては文字化けします)がもっとも美しく高貴な色とされていてモスクなどの装飾やアラビア模様のタイルなどでは頻繁に青い色が用いられている。当然ながら、アラビア語の青と言う言葉にもそういった意味が含まれているのだろうが、残念ながらアラビア語については全く分からないのでこちらについては良く分からない。またヨーロッパから日本まで多くの国では「紫」がもっとも高貴な色とされていたのは、古代では紫と言う色に染めるのがとても難しく高価だったからに他ならない。当時、鮮やかな紫色に染めるのに使われたのは古代ローマからヨーロッパなどではツブリボラと言う小さな巻き貝の一種だが、1gの染料を作るために必要な貝の量はなんと2000個とも言われていた。またアラビアや中南米では代わりにコチニールと言う貝殻虫の一種の卵が使われていたが、こちらも小さな貝殻虫のさらにその卵を使うのだから膨大な量の虫が必要になるのは言うまでもないだろう。またインド・中国で高貴な色とされていた黄色についても事情は同じで、もっとも美しい黄色に染めることが出来るとされていたサフランは、今でも香辛料売り場で値段を見れば分かるように非常に高価なものである。
振り返って日本の色はどうだろうか、これについては知人のmixiの日記できちんとまとめられたものがあったのでそれをちょっと引用させてもらおう。
信号の緑を「青」と呼ぶ日本人、色については独特な文化を持っているようだ。四十八茶百鼠という言葉が示すように古来日本人は色に対して非常に繊細な感覚を持っている。ところが、おどろいたことに古の日本にはアカ、クロ、シロ、アオの4色しかなかったという。
しかもこの4色、当初はそれぞれ明、暗、顕、漠、であり、今でいう色の考え方とはかなり違う、アカの反対はクロで、「はっきりした」が語源のシロの反対はアオ、つまりはっきりしない色はみな「アオ」なのである…信号機の緑どころの話ではないわけだ。
アカについては「赤の他人」、「赤っ恥」などで「明らかな」という元の意味が残っていて、色としては今日での茶色や朱、黄色をも含む色であったらしい。アオは青毛の馬の色が寧ろ灰色なのを見ても実に良く判らない…。藍から緑にかけての広い範囲をみなアオとしていたようで、黄色が明確に赤から分かれるのは平安時代のようだが、緑にいたっては現代に至っても明確に分離していないようだ。
それにしてもあれだけ細やかな自然を愛でる文化を持ちながら、一方でこれだけ色を示す言葉が少なかったのは何故だろう。日本の色を示す言葉が充実するのは上に書かれているように平安時代後期まで待たなければならなかったのである。
Comments