浅草の鳩
浅草近辺で働くようになって気づいたのは、ここはやはり江戸時代から文化の中心だった町だっただけあって、街のカラーというか独自の文化が濃厚に感じられることだ。特にその思いを強くしたのは、街の独自の文化というと町並みやお店が独自のものがあるとか、若者が多いとかいった良く商業地にありがちなレベルではなく、そこで住み働いている人たちや、住み着いている動物たちですら独自の雰囲気がある点である。
特に浅草では鳩をよく見かけるのだが、この鳩が他の街と違うのだ。単に鳩が多いと言うだけならよくある話だろう。しかし浅草らしいというか、ちょっと他と違うよと思うのはこの街の鳩、人をおそれる気配が全くないのである。写真は浅草演芸ホールそばのマクドナルドで見かけた鳩たちだが、この鳩、ちょうど小さい子供連れの母子がいっぱいいる時間帯だったにもかかわらず、平気で人が座っている屋外席の椅子やテーブルの下にまでやってきて、客が落としたポテトなどをついばんでいるのである。このような光景は別にここだけに留まらない、観光客でごった返している雷門の周りだろうが、屋根に覆われたアーケード商店街の中だろうが、ごく普通に鳩たちは人に交じって(逃げもせず)歩き回っているのである。そのあまりの飛ばなさぶりに本気で羽が抜かれているのではと思うくらいだ。
ガラパゴス諸島などの人がこなかった太平洋の島々の鳥は人を恐れる事を知らず、平気で水夫達に留まったりしたそうだが、まるでそれを彷彿させるような光景であった。
太平洋諸島の鳥たちはその後、腹を空かせた水夫達によって乱獲されてしまうのであるが、日本が食糧危機になったときには最初に食われてしまうのはきっと浅草の鳩たちなのかも知れない。
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