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June 03, 2005

書評:アポロとソユーズ

4789724522アポロとソユーズ-米ソ宇宙飛行士が明かした開発レースの真実
 もともと宇宙関係の書籍はあまり話題になるものではないが、内容の割には話題に上らないのはもったいないと思ったので少しここでも取り上げたい。
 この本、副題にあるように冷戦時代を中心に1950年代から1980年代にかけての米ソ宇宙開発競争をそれぞれアメリカ側とソビエト側の宇宙飛行士(ディヴィド・スコット氏とアレクセイ・レオーノフ氏)の視点から書いたものである。2人の立場は微妙に異なるものの、長年にわたって米ソの宇宙開発の中枢にいた飛行士として、ジャーナリストの取材では触れることの出来ない当事者としてのエピソードに満ちている。特にソビエト側のアレクセイ・レオーノフ氏の話は、既に公表された事も多いとはいえ、まだまだこれまで知ることの出来なかった様々な話がたくさんあり、資料としても貴重なものといえるだろう。また2人とも長年のキャリアを誇るだけあって、米ソ宇宙開発史としても一流の内容になっている。また現役の宇宙飛行士だったからこそ書ける、同僚達の人柄も様々なエピソードを交えながら血の通った仲間として書かれていて、歴史上の人物や偉人ではなく身近なだが賞賛に値する人間として彼らを感じることが出来るだろう。ただ惜しむらくは完全に2人の視点から当時を振り返る形で書かれているので、ある程度の予備知識がないと理解できなかったり物足りない部分があるのは残念である。宇宙開発にあまり詳しくない読者の為にももう少し脚注を増やしてもらえるとさらに良かったと思う。
 また宇宙開発以外の話で興味深いのは、最初は互いに相手国に対する敵意を不信感をむき出しにしていたのが、互いに相手の宇宙飛行士とふれあう機会を持つにつれ、相互理解を深めていく様である。この手の話は多数あるものの、実際のエピソードを交えながら双方が歩み寄っていく様は読んでいて感動的である。

 最初は2人の話がバラバラに書かれていて、読みにくそうな印象を持つかも知れないが、いつしか米ソの宇宙開発が協力するようになるにつれ2人の話は巧みに繋がってきて、最後のアポロソユーズドッキングプロジェクトあたりでは、夢中で読みふけってしまった。最初の取っつきの悪さや見た目のボリューム(全540ページ)に気圧されずに手にとって欲しい1冊である。

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