ネーミングセンスにお国柄を見る
ロシア語を勉強して気づいたことの一つに、ロシアのネーミングセンスのベタさがある。どういう事かというと、軍用兵器・人工衛星・時計に限らず実にひねりのない名前をそのまま付けるのである。例えば国際宇宙ステーション(ISS)が上がる前、旧ソ連が誇っていた宇宙ステーション「ミール」(ロシア語ではМир)はまんまロシア語で「平和」と言う意味の言葉だし、歴代の惑星探査機も日本語でいうと「火星○号」、「金星○号」と言うネーミングだったりする。不思議なのは機密保持のせいなのかも知れないが、軍用兵器に関してはこうした名称はいっさい用いず、Mig(ミグ)やSu(スホーイ)などの開発局のコード+開発番号のような素っ気ない名前だったりすることだ(ちなみにフランカーなどの通称は西側が分類のためにつけた名称でロシア側でつけたものではない)。それなのにそこで使われているアビオニクスや装置などには名称があるのが面白い。ちなみにISSとの連絡に使われているロシアの宇宙船Soyuzに使われているドッキング装置の名前はКурс、日本名で「コース」の意味である(注:裏は取っていないので間違いがある可能性あり)。他にも軍用兵器のレーダーや火器管制装置にもそれぞれ名称があるそうだが、残念ながらそれらについては良く判らない。きっとこうしたネーミングセンスを見ると、もしかしたらこうした装置の名前も「花」とか「空」とか一般名詞だったりするに違いない。それもちょっと面白い感じがする。それでもこうした名前がかっこよく聞こえてしまうのは(私だけか)外国語だと言うこともあるだろうが、音の響きの違いもあるのだろう。ただ日本語でも人工衛星や惑星探査機の名前は「ひまわり」「きく」「のぞみ」などそのままの言葉が使われているし、新幹線や特急電車の名前などでは「ひかり」「つばめ」などが使われてなじんでいる所を見るとようは選ぶ言葉の響きの問題なのかも知れない。
(個人的には戦前の軍用兵器のような「大和」「隼」「雷電」のような日頃はあまり使わないが響きのいい言葉も好きなのだが、今の時代にはなじまないのだろう)
ところでべたな名前で思い出したが、アメリカのネーミングセンスもべたなセンスで言えば相当なものなのを思い出した。アメリカのネーミングセンスで実にアメリカらしいなあと思うのは、選ぶ単語がこっぱずかしいと言うか自信満々というか、実に大げさな名前がよく使われることである。その中でも私が一番すごいと思うのは、戦略核ミサイルの名前に"Peace keeper"(平和を維持するものと言ったところだろうか)とつけてしまうそのセンスである。日本人の感性だとさすがにこれじゃあ悪趣味だろうと思うのだが、どうも連中はそう思わないらしいのだ。ベトナム戦争時の戦闘機に"freedom fighter"(自由の戦士)とつけるくらいならまだ判るのだが。
このように名前の付け方一つでもお国柄の違いが出るのが面白い。今回はロシアとアメリカくらいしか触れられなかったが、他の国でも面白い例があるのだろうか。もしあったらぜひ聞いてみたいものである。
Comments
はじめまして。中々興味深い考察ですね。
単語は失念しましたが、Mig21フィッシュベッドはロシア軍で一般には「タバコの吸い差し」と呼ばれているとか?
フランカーはジュラーヴリク?(鶴、でしたか)だそうでこれはロシア人もなかなか風流だなと思いました。西側陣営の「鷲」に対抗するにふさわしい優美な呼称ではないかと思います。
戦争自体を肯定するつもりはありませんが、旧日本軍が艦船名に山や川、地名などをあてたのは国を守る、という意識高揚には良かったのかもしれませんね。
Posted by: フランカー | July 28, 2005 03:04 PM
はじめましてフランカーさん。やはりロシア軍でも兵士の間では戦闘機に通称がついてるんですか。しかしMig21がタバコのすいさしと言うのはあのノズコーン周りなどを見ると言い得てますね。ロシア語だと(костер:カステェール?それともコーステェル?)とでも呼ばれてるのでしょうか?
フランカーが鶴こと(журавль:そのままロシア語の読みに従えばジュラーヴリィあたりでしょうか?)と言うのもあの優雅なフォルムを表している感じがして好感が持てます。結構ロシアのネーミングセンスもよく特徴をとらえてますね。
有益な情報ありがとうございます。
Posted by: doku | July 30, 2005 12:52 AM