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July 03, 2005

書評:誕生国産スパイ衛星

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誕生国産スパイ衛星
 日本の偵察衛星に関する分析で秀逸だったのは、松浦さんが日経Biztechに書いたものがあるが(以下の参考Link参照のこと)、そこで語られなかった政治・外交面での分析がこの本の売りと言えるだろう。
 特に興味深いのは、アメリカのさまざまなアプローチと圧力についてである。詳しくは本書を読んで欲しいのだが、当初アメリカは日本の偵察衛星に関して日米同盟の支援するものだとする見方と、日本独自の安保外交路線につながるものだとする見方を持っていて、後者の見解を取る側は日本独自の偵察衛星配備計画を快く思わず、様々な圧力(と言ってもいいだろう)をかけてきた下りが生々しく書かれている。
 また、最終的にアメリカが前者の見方を取るようになってからも、今度はロッキードマーチンをはじめとしたアメリカの航空宇宙産業が猛烈な売り込みをかけて国産化を断念させようと、アメリカ政府と共に圧力をかけてくる下りもあり、これらを読むと日本の偵察衛星の問題はそのまま日本の安保外交路線と国内産業保護問題と関わっていることが浮き彫りになっていることが判ると思う。
 そして判るのはこれらに対して日本が明確なビジョンと分析を持たない限り偵察衛星はもちろん、日本の産業自体いつまでもこうした問題に振り回され、様々なしわ寄せがかかり続けると言うことではないだろうか。

参考Link:解説:情報収集衛星、既存衛星構造体採用が性能面の妥協強いる

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