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October 12, 2005

JAXAの超音速小型機の飛行実験とシミュレーションの話し

 JAXAのウェブサイトによると、10月10日の朝にオーストラリアのウーメラ実験場で行われた小型超音速実験機の飛行実験が成功した。ところでこの実験の意義だが極東ブログに判りやすく解説してくれたものがあったのでそれを引用させてもらうことにする。

動力がなく「空気抵抗を受けにくい形状」というのは、つまりメインは矢尻のような翼のことだ(もちろん胴体もだけど)。そして、それをなぜ実験したかというと、スーパーコンピューターに依存した新設計法が有効だったかという検証が重要だったからだ。日経はやや曖昧だがこうまとめている。

機体に設置した約800個のセンサーを使って、日本が得意とするコンピューターを使った設計技術で開発した機体に対する空気抵抗など様々なデータを集めた。

 繰り返すが、今回の実験ではスーパーコンピューターに依存した翼の設計手法が問われていたというのが重要なポイントだった。そこが日本が今後売り物にできる技術だからだ。

 そんな訳で今回の主眼はマッハいくつで飛んだと言うことよりも、そのときのデーターとシミュレーションとの突き合わせに意味があったわけだが、実はこうした流体力学を多用した設計から試作までの期間の短縮化は飛行機に留まらずあらゆる工業製品に及んでいる。
 例えば先日の本田雅一の週刊MOBILE通信でF1における流体シミュレーションの応用について触れていたが、今のF1ではコンピュータによる流体解析技術「CFD」を使用して、新空力パーツを導入した場合の影響について、ほとんどをコンピュータ上で把握可能になっていると言う。そのため強力なCPUを持つチームほど、短期間に多くの空力パーツの更新しそれだけ多くのデーターを集めることでより高いパフォーマンスを持ったマシンの開発が可能になるわけだ。もちろんこれはF1にとどまらずあらゆる車に応用されているのは言うまでもない。現在スーパーコンピューターの納品先の多くは自動車メーカーだと言われているくらい、車の設計と流体シミュレーションは密接に結びついているのである。
 同様の事はカメラのレンズ設計でも当てはまる。特にレンズ設計における光学シミュレーションは流体力学程のCPUパワーを要求しないこともあって、今では市販されているパソコンクラスでも十分光学シミュレーションは可能なのだ。

 しかしここまでシミュレーションが進んでも設計自体は自動化できないと言ったら、意外に感じるだろうか。実は比較的計算が楽とされるレンズの光学設計でさえシミュレーションは試作したレンズのテスト結果を出すことは出来るものの、さらに良くするためにはどうしたらいいかと言うことを調べるのにはまだまだ力不足なのである。レンズ設計について書かれた良書「写真レンズの基礎と発展」の中に印象的な台詞がある。

結局、複雑な起伏を持つ地形を、出発点A地点(初めの構成データー)から移動して、もっとも低い谷の底(φの極小点)S点を見つけるのが自動設計ということになる。しかし、地形の全体的な様相が見渡せるわけではなく、A地点にいる場合は、そのごく近傍の勾配や地形が分かっているにすぎない。足元のみ懐中電灯で照らしながら全くの闇夜に深山を徘徊して谷底を探す行為と思えばよい。
人間の主導権はまだ当分安泰そうである。

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