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October 01, 2005

書評:インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?-情報化がもたらした「リスクヘッジ社会」の行方

4757211708インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?-情報化がもたらした「リスクヘッジ社会」の行方

 私も以前も何度かインターネット論を取り上げたが、既に同じ切り口で遙かにつっこんだ調査の元に本が出ていたのでちょっと取り上げる。とはいえ、すっかり出遅れてしまって言いたいことはほとんど書かれてしまっているので主に内容は関連Linkの紹介である。

思考錯誤 森健『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』

深川狸汁亭雑記 - 森健『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?—情報化がもたらした「リスクヘッジ社会」の行方』

要するにネットワークやIT化によって互いに相手を簡単に調べたり連絡を取れるようになったので、相手に気を遣ってあらかじめ相手の様子を見たり、自分のリスクを減らす為に相手を調べているうちに意識しないうちに相互監視の自縛に陥ってしまっていると言う話だが、その他にも個人対個人の他に社会との関わりやいろんな切り口について語られていて参考になる。またその背景にあるものは「リスク回避」であり、もともと不信がはじめにあったわけではないという点だ。今手元にあるツールがたまたま提供しているからこそ、信用の強化を求めてそれを選択したわけでしかも最初から監視するための手段が有るために「普通」になってしまう。しかしその結果生じるのはリスクが減る代わりにそこ(相互監視システム)からの逸脱者を許さない社会になってしまう訳である。

 ところで多くのBlogや掲示板では、ここに書かれている事を下敷きにして、今のリスクヘッジ社会のあり方や相互監視社会について考察しているところが多いが、それからの脱出法やみんながリスクを嫌うために生じる逸脱者への制裁についてはあまり話題になっていないようなので、ちょっとその辺についての議論の方を聞きたいところだ。何故ならおそらく今後ますますこうした事は現実になっていくことだし、しかもこれを逃れるためにはこうしたツールやシステムを使わないとあまりにも不都合がありすぎるからである。
 ひとつのアイディアは全く分散化された多様性のあるシステムにしていくことだろうか。あまりにも壮大で漠然としすぎていて優等生的すぎる回答だと思われるかも知れないが、完全に分散化された社会を書いたSF「ウロボロスの波動」に書かれているような事を想像してみるとあながち不可能ではないと思うのだ。

そんなSFのような話ではなく今すぐなんか手はないのかと言う問いに関しては、これが幸か不幸か日本(語)などの文化・文明圏レベルまでの広がりで分断されていて、全世界まで広がっていない点を突くしかないだろう。なんかこう書くとよく右翼が言いそうな「それがいやならこの国から出ていけ」と言う話みたいで恐縮だが、別にここから出ていく必要などないのだ。ただ他の言語・文化圏のチャネルを利用できるだけでもずいぶん選択肢は増えると思うのである。

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参考Link:中国語はおもしろい 講談社現代新書
著者が長年中国語を学び使ってきた中で見聞きし感じた中国語圏の文化、人々に関する話織り交ぜながら書いた中国語に関する本。単なる中国語の文法や学習法にとどまらず英語との比較や文明論まで話は広がっている。興味深いのは私たちが想像している以上に広大でオープンな中国語を使って生活している人たちのコミュニティの広大さと懐の深さだろう。本当にこれを読むと漫画「健児」やビッグコミックスで連載中の「竜(RON)」の中で書かれているように人脈やツテをたどるだけで全世界を旅行したり、いざと言うときにかくまってもらったり出来るのではないかと思えてくる。事実、著者は中国語が流暢に話せるだけで現地価格でホテルに泊めてもらったり、合うことが不可能と思われる人物を紹介してもらったりしているのである。これを読むと英語以外にも全世界に広がった文化圏があるのだと気づかされるであろう。

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