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December 29, 2005

日本のゲーム産業が直面する危機

 経済誌におけるゲームに関する記事というと、ピントはずれなものが多いような印象があるが、今回の日経の記事は日頃ゲーム制作に関わっている一人として日頃感じている危機感をまさに代弁しているような記事だった。
まずは下に引用してみたい。

日本のゲーム産業が直面する危機――新ハードがもたらす開発費の高騰(日経)  2005/12/28(Wed)

 日本のコンテンツ産業の中でゲーム産業は優良な輸出産業といわれ、注目を浴びてきた。90年代後期には不況に強い産業ともいわれてきた。  しかし、今はその逆である。日本のゲーム産業は、危機的な状況に追い込まれつつある。次世代ハードの登場によって、これはより鮮明になっている。次世代ゲーム機向けのソフトでこれまでと同じように、収益を出せるかどうか、怪しい状況に向かいつつあるからだ。

開発=機材費から開発=人件費へ

 ゲーム機の歴史は、コンピューターテクノロジーの進化の歴史であると同時に、最先端テクノロジーを巻き込んだ開発費高騰の歴史でもある。  83年に発売された任天堂の「ファミリーコンピュータ」では、ゲーム1本当たりの開発費は1千万円といわれた。これが、90年の「スーパーファミコン」で数千万円、94年のプレイステーションでは、1億円が相場といわれるようになった。
 そして、2000年のプレイステーション2では、2-3億円が開発費の下限といわれるようになり、10億円を超えるような巨大プロジェクトも登場するようになった。ところが、次世代ハードでは、10億円が最低ラインになり、ちょっとした規模のタイトルだと20億円規模にまで開発費が高騰すると予想されている。
 これほど開発費が高騰する理由は、ゲーム機の仕様の向上によって、グラフィックスの表現能力が飛躍的に増大した結果である。ゲーム機の初期の開発にかかっていたコストの大半は、ほとんどが開発機材にかかるコストだった。ところが現在は、グラフィックスに関係するところを作り込むための人件費が多くを占める。描画の表現能力の拡大は、ゲーム開発において、大量のグラフィックス作成の専門職を必要とするようになってしまった。
 グラフィックスの善し悪しはユーザーにも簡単にわかってしまうところであるため、手を抜けばすぐに売上本数の悪化として跳ね返ってくる。またユーザーに対しても、アピールもしやすいところであるため、コストをかけざるえない。

日本市場だけでの回収は困難

 問題は、新ハード向けタイトルにそれほどコストをかけて、今の日本企業に回収できるかである。これほど開発コストが上昇すると、日本国内で発売するだけでは、タイトルを黒字化できなくなってしまうのである。北米・欧州の市場でヒットすることが開発するか、しないかの前提条件になってしまう。
 今の日本のコンシューマー機市場のパッケージの国内総出荷額は、ピークだったプレイステーション時代の97年に記録した5832億円に対し、2004年で2358億円と、半分以下にまで落ち込んでいる(共に『CESAゲーム白書』)。この間に、プレイステーション2へとハードは代わり、開発コストは上昇しているのに、タイトルの販売本数は減っている。海外市場でヒットが出ないコンシューマー機企業の収益は、大手であっても厳しい状態にある。
 新ハードによる開発費の高騰は、この厳しい状況にさらに追い打ちをかける。
 日本市場の不調を尻目に、特にコンシューマー機は、北米・欧州市場では好調だ。北米企業は拡大し続ける市場からの収益によって、増大するコストに合わせた開発体制を整えつつある。コンテンツ産業は、自国市場で確実に収益を上げることによって、圧倒的な強さを発揮する。北米企業が強くなる中で、日本企業は海外で、サッカーでいうところの「アウェー」での戦いを強いられるようになっている。

 ネガティブに見ると、日本のゲーム産業は、かつての日本映画と同じパターンで衰退の歴史を歩んでいるとも言える。それほど日本のゲーム産業が置かれている状況は危機的だ。日本のゲームが世界を席巻していたことは、もはや「神話」になりつつある。

以前にもX-Box360関連の記事を書いたときに触れたが、今の仕事先を初め日本の大手ゲーム会社はもはや海外の売り上げを抜きにしてタイトルを作ることは出来ないのが実情だ。その理由は上の記事でも書かれたとおりだが、残念ながらそれに対抗する方法はあまり模索されているとは言えない。唯一、任天堂が面白いアプローチをしているが果たしてどうなることだろうか。

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