男は家を出て行った
男は家を出ていった
棍棒片手に 袋をもって
遠い旅路へ
遠い旅路へ
歩いて出かけていった
ずっとまっすぐ進んでいった
ずっと前を向いていた
眠らず 飲まず
飲まず 眠らず
眠らず 飲まず 食べもしないで
そしてある日 明け方に
暗い森へ入っていった
その時以来
その時以来
以来 姿を消してしまった
でももしあなたが
男をたまたまみかけたら
そのときはすぐに
そのときはすぐに
すぐに わたしたちに教えてほしい
ロシアの詩人ダニエル・ハルムスの誌。
1937年にこの誌を発表したハルムスは、1941年に突然逮捕され収容所で亡くなった。まるでこのなかの男のようにある日突然消えてしまったのである。
再び、ハルムスのことを書こうと思ったのは、こうした悲劇の運命の人たちに惹かれるのと、偶然この訳を付け今NHKラジオ講座で講師をやっている鴻野わか菜さんのページをたまたま見つけたからである。
それにしてもこの誌がこんなに気になるのは何故なのだろう。自分自身がこうした報われることの少ないひたむきさに憧れているからなのだろうか? あるいは物事がうまくいかないときに単に自分自身を投影して陶酔しているだけなのだろうか?
そういえば以前、性格診断テストか占いかなにで「あなたは何かをするに当たって大義名分が必要なタイプです。それがあれば身を粉にして社会に貢献するような大きな仕事をしますが、それがなければ何かをしたいと言う要求だけに振り回されて社会の破壊者になることが多いでしょう。」と言われたことを思い出した。
さて自分はどこに真っ直ぐ向かって行くのだろうか?
Comments
私もとても気になります、この詩。
しかも、訳がよいですね。
いろいろなことを重ね合わせてしまいます。
そういう威力を持ったものに出会えることは、大きな幸せのように感じます。
Posted by: double face-d | December 28, 2005 09:57 AM
こんにちは、double face-dさん。どの国も誌もそうですが、この誌もロシア語の原文だと韻を踏んだ作りになっていて、まるで音楽のように心地よい響きになっています。ちょうど明日30日にNHKラジオロシア語講座(AM8:50、再放送PM4:40)でやるそうなので、もし気が向いたら聞いてみると面白いかもしれません。
Posted by: doku(fukuma) | December 29, 2005 01:10 AM