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June 18, 2006

日本の核開発能力を検証する(3)

 前回2回は核開発能力でもその弾頭部分を中心に書いてきたが、今回は運搬手段であるミサイル部分について書いてみたい。
 よく日本の核開発能力の話になると、必ず出る話に「日本は既に世界最高レベルの固体燃料ロケットを持っているのだからこれを転用すればすぐにICBMを作ることが出来る」と言うものがあるが、果たしてこれは本当だろうか。折しも、日経BPでジャーナリストの松浦さんがその固体燃料ロケットM-Vを巡る問題点を記事にしているので、これらの記事(参考Link)を参考に検討してみることにしよう。
 それによるとM-Vは高性能ではあるが想像以上に最適化が進んだ、ある意味ゼロ戦などに通じる余裕のない設計であることが伺える。一部、印象的な部分を抜き出してみるとこのように書かれている。

(前略)
その結果、M-Vは世界にも他に類のない、性能を追求して徹底した最適化を施されたロケットとなった。第1段から第4段に至るまでの推進剤の量や燃焼時間に推力、切り離しのタイミング、どのような高度をどのような速度で抜けていくかの飛行プロファイル――すべてが性能のために最適化された。
それだけではなく、M-Vは、宇宙科学研究所の内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県・内之浦町、現肝属町)の打ち上げ施設と、そこに集まるロケット打ち上げ班についても最適化された。M-Vは内之浦の崖の上に立つ発射施設からしか打ち上げることができない。またロケット内部の構造は、ランチャー班、テレメトリー班、レーダー班といった班単位で準備作業を進める、東京大学以来の打ち上げ体制に合わせてブロック化されている。各班の仕事分担が、そのまま内部構造に反映している訳だ。

 一方、ミサイルに要求されるのは極限まで突き詰めた性能よりも即応性と運用の容易さが要求される。使用される場所・目標・時期は一定せず、しかも必要なときはいつでも打ち上げ可能でなければいけないからだ。こうしてみると日本の固体燃料ロケット技術は軍事転用しようにも要求される性能・目的が違い過ぎるため実は何も流用出来ないと言うことも出来る。もちろん箇々の基礎技術やパーツなどは十分役に立つのは間違いない。しかし巷で吹聴されているような衛星を弾頭に入れ替えれば即完成と言ったものではないのは確実だろう。
 かねてからの疑問の一つに日本が優れた固体燃料式ロケット技術を持ちながら、どうしてそれについて外国から脅威論や懸念などが聞こえてこないのだろうと思っていたが、こうした事情もあるのだろう。思った以上にロケットの軍事転用は難しいものらしい。

参考Link:
日本の核開発能力を検証する
日本の核開発能力を検証する(2)
以上、昔書いた記事

松浦晋也の「宇宙を読む」より:日経BPに書かれたM-5を巡る問題点の記事
低コスト化で岐路に立つM-Vロケット(1)〜表面化する日本のロケット開発力の衰退
低コスト化で岐路に立つM-Vロケット(2)〜失敗が生かされない設計の裏に旧組織からの確執
低コスト化で岐路に立つM-Vロケット(3)〜問題の根本は情報収集衛星による予算不足
低コスト化で岐路に立つM-Vロケット(4)〜顧客である衛星のために欠点補う改良を

2006/9/21追記:そのMVロケットだがどうやら開発中止は決定的らしい。その裏にある問題点は以下の記事を参考にして欲しい。
MVロケット廃止に関する記事のクリップ

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