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December 05, 2006

書評:インテリジェンス 武器なき戦争

 今、「インテリジェンス 武器なき戦争」と言う本を読んでいる。あの「ラスプーチン」こと佐藤 優氏と小説「ウルトラ・ダラー」の著者、手嶋龍一氏の対談なのだからつまらない訳がない、初っぱなから以下のようなジャブが炸裂する。

・小説「ウルトラ・ダラー」が書かれたいきさつに関して

佐藤:北朝鮮の偽ドルとウクライナのミサイルに関する情報は、かなり信憑性が高いと思います。そこで、あえて私の勝手な推測を言わせていただくと、この情報を集めたインテリジェンス集団が手嶋さんの近くにある。いずれにせよ、手嶋さんがこの小説を書いた動機の一つは、そこからの働きかけでないかと私は睨んでいるんです。
 おそらくその国家もしくは組織は、日本がこの小説で書かれている問題に対してあまりにも鈍感であることに業を煮やしていた。
 そこで「どうにかして日本人にインテリジェンスの現実を気づかせたい」と思い、手嶋さんに目をつけた。手嶋さんなら、提供した情報をいったん自分で咀嚼して別の形に組み立て直して書くはずですからね。そうなれば情報源の秘匿もできるし、作品の説得力も違ってくる。(一部要約)


・2006年8月10日のイギリス情報機関による旅客機テロ計画の容疑者大量検挙に関して

佐藤:(前略)ここから先は私の推測ですが、テロにいたる計画行動を主導する中心部分まで協力者を送り込んでいたのではないでしょうか。
手嶋:おや、「推測ですが」とおっしゃいましたね。この本の賢明な読者はすでにお気づきでしょう。ラスプーチンが、こういう前置きをするときは要注意です。この台詞は、情報源を秘匿しようとするときに使われる符丁なのですよ。(一部要約)

 こんな感じでイラク問題、対ロシア外交戦、大韓航空機撃墜事件の内幕、チェチェン紛争、日本のインテリジェンス機関の問題点などについて、さまざまな実例を挙げながら分析・討論するのである。
 当然、驚くべき新事実や思わず膝を打つような鋭い分析が飛び交うわけだが、特に印象に残ったのは日本のインテリジェンス機関の問題点についてである。例えば日本のインテリジェンス活動は実はかなりのレベルにあるものの、国としての明確なビジョンがないので各省庁や専門機関ごとにバラバラに行われていると言う。しかもそれぞれの情報組織は「省益」の壁に阻まれて他の組織の情報には触れられないのが実情だというのである。また国の中心となる2大インテリジェンス機関である「外務省」と「警察」が、前者は官僚主義に毒され、後者は国内の監視・摘発にばかり走り、外国に対する広報活動・情報操作を行う者までも萎縮させ、現地での情報収集がおろそかにされていると言う問題点も挙げている。
 そしてこうした内向きの視点は時として国益にも反する事態も引き起こしているという。例えば大韓航空機撃墜事件の際は日本はソ連側の無線を傍受し、撃墜を否定するソ連当局を追い詰めた美談とされているが、実情はアメリカが日本がつかんだこの情報を勝手に使って対ソ外交に使おうとしたのに対抗するため急遽日本が先にリークしたのが真相で、これによって日本の無線傍受レベルがソ連にばれてしまいあっという間に対策を打たれてしまったのが実情だった。だがそれにもかかわらず、国内向けの美談に仕立て上げた事によって結局、国内情報がアメリカに完全に筒抜けになっているという情報管理の甘さはうやむやになってしまったと言う。

 ここからは私の感想だが、やっかいなのはこうした問題点は今も少しも変わっていないばかりか、国民レベルにまで広く蔓延しているのではないだろうか。ネットなどでもインテリジェンスを強化すると言う話になると、すぐに国内の反日分子を取り締まるべきかと言った内向きの議論ばかりになってしまう。挙げ句の果てには自分たちの意に沿わない情報がもたらされると互いに「あいつは○○側の手先だ」と言う有様だ。両氏によると日本の潜在的インテリジェンス能力は決して低くはないそうだが、私自身はかなり悲観的に感じている。

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Comments

はじめまして!こんにちは!
内容が興味深かったので、記事掲載させていただきますm(__)m

Posted by: 涼微 | December 31, 2006 at 08:02 AM

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