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December 01, 2006

アレクサンドル・リトビネンコ暗殺事件を検証する

 もういろんな所で報道されているが元ロシア連邦保安庁(FSB)情報部員アレクサンドル・リトビネンコ氏が不振な死を遂げた。国内のマスコミなどではロシア政府による暗殺ではないかという説がほぼ確定したかのような論調で書かれているが、いろいろと調べてみるとそう単純なものでもないようだ。

 詳しい検証についてはすでに2ch軍事版で行われ、早速軍事板常見問題にまとめられているので、まずはそちらを読んで欲しいのだが(それにしてもこうしたニュースの検証は本当にここは早いな)(注1)、結論だけをはしょって書いてしまうと、どうも「プーチン政権直接関与」というよりはFSBの私的制裁かロンドン在住の反プーチン派富豪べレゾフスキー側の謀略に利用された可能性の方が高いらしい。(注2)
 また暗殺に使われたとされるポロニウム210についても不審な点がいくつかある。まず一番の問題はこのような特殊な物質をどうやって入手したのかという点だ。元々、ポロニウム210は原子炉などの施設によってビスマスに中性子を当てることで生成する。その半減期はわずか138日しか無いため長期間の保存も出来ず、しかも非常に毒性の高いと言うもので、国家機関以外の組織が入手できるとは思えない。そのためにロシア政府が直接関わったとされていたのだが、どうやらそうでもなさそうなのだ。なんでもTechnobahnの記事によると少なくとも米国ではポロニウム210は規制の対象ではなく誰でも購入することができるといい、なんと通販さえ行われていたと言う(注3)。また毒性に関してもWikipediaでは致死量はわずか6.8 pg(1兆分の6.8グラム)と書かれているが、そこまで微量で人が殺せるものでは無いという意見もある。

 いずれにせよまだ分からないことばかりであるが、一つだけ言えるのはロシア政府による口封じといった単純なものではないと言えるだろう。

注1:特設コーナーなので時間が経つとリンク切れになっている可能性があるので注意
注2:ただし佐藤 優氏の「リトビネンコ氏暗殺の背景」によると、ロシアの工作機関の縄張り意識は非常に強いので、国内情報機関であるFSBが国外で謀略活動をすることは考えられないという。
注2-2:べレゾフスキーはエリツィン時代に活躍したオリガルヒ(新興財閥)の一人、当人は否定しているもののロシアマフィアとの結びつきが指摘されている。
注3:問題の会社の説明では通販されるのは超微量で暗殺に使うためには15,000個を購入する必要があるそうだ

関連記事:極東ブログ:リトビネンコ毒殺疑惑、雑感

追記:2007/4/29 軍事板常見問題のリンク先移転に合わせリンク先を修正。(「軍事板常見問題」管理人さん連絡ありがとうございます)

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