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December 25, 2006

外国語の正しい発音とは

 語学のテキストやアナウンサーの発音などで正しいとされる音は何を基準に決めているのだろうか。日本語についてはNHKの放送が始まったときに、基準となる言葉を東京で話されている話し言葉を元に決めたと言う話を聞いたことがあるが、他の国の言葉についてはどうなのだろうか。
 例えば英語は多くの国で母国語として使われているが、どの発音が基準となっているのだろう。少なくともイギリス英語やアメリカ英語があることからも、国際的に共通の正しい発音があるようには思えない。しかし日本では英語の発音と言うと圧倒的にアメリカ英語しかも実情は受験競争において正しいとされる発音がまかり通っているようだ。しかし実際にアメリカに行くともちろん地域によって発音はまちまちだし(昔ニューオリンズに行ったときはヒアリングに難儀した)正統派とされているアナウンサーの発音や政治家のスピーチも日本の一般教育で教えられている英語とは結構違う気がしてならない。結局の所、各国のアナウンサーの話す英語が少なくともその国で標準とされている英語なのだろうけど、非英語圏にどの英語を教えるかは今でも英米を中心に綱引きがありそうだ。
 ところでそのローカルな各国の英語でも、何を基準に発音を決めているのかを見てみると興味深い。日本の感覚から言えば首都が置かれている都市の発音が基準になっていそうなものだが、イギリスなどでは明らかに地域ではなくクラス(階級)が発音の基準になっていたりするからだ。

 英語の話が長くなったが、他の外国語ではどうだろう。たとえば中国語では13世紀から一貫して漢語、それも北京を中心とした北方の言葉が発音の基準となっていた。面白いのは途中、元や清朝などの非漢民族の王朝が立ったときでさえ北京語が基準になっていたことである。しかし、それでも大きな中国のこと今でも北京語と広東語の違いはドイツ語とイタリア語以上に音が違うそうだ。(参照:中国語はおもしろい

 不思議なのは同じ巨大な領土を持つロシアでは、それほど地域によって発音が異ならないと言うことだ。もちろん地域によって違いはある。シベリア当たりでは極端に文法が単純化され、モスクワの人間からすれば粗雑な命令口調に聞こえる話し方をする地域は多数あるのだが、それでも言葉は通じるらしい。(余談だがシベリアで話されるロシア語が命令口調なのは、中央から支配者として来た連中が命令を下すために話したロシア語が基準になっていると言うはなしである)
 ただちょっと面白いのはロシア語の基準となる発音を巡ってモスクワとサンクトペテルブルグとの間に確執がある点だ。この点がちょうど日本の東京と大阪、京都などの確執みたいで面白かった。

 標準的な発音を巡る確執と言えば、アラビア語でも似たような話しがある。初めにアラビア語をよく知らない人のために簡単に解説しておくと、アラビア語には標準ととしての「フォスハー」と話し言葉としての「アーンミイヤ」の2種類がある。同じアラビア語圏といっても共通で通じるのは原則としてはフォスハーのみ、各地域・各国内ではアーンミイヤのみが話される。それなら共通語はフォスハーでいいやんと外国人は思うのだが、どうもアラブ圏においてはフォスハーは堅苦しく上品すぎる感じがするらしいのである。おそらくフォスハーがコーランを詠唱する際に使われる発音であると言う不可侵性がこうした感じをあたえるのだろう。そんなわけで通常アラビア語の発音はアーンミイヤの発音が用いられる訳だが、このアーンミンヤの発音を巡ってエジプトとイラクで確執があるらしいのだ。ともに太古からの歴史を誇り、アラブの中心だと自負のある両国は当然ながら全アラブ向けのメディアや娯楽に関しても自国の発音で発信する。ところがこの両国の発音というのが双方でまるで違うのである。(参考:恋するアラブ人

 ところで非英語圏でも最近は英語の浸食が広がっているらしい。例えばロシア語では疑問文は英語と違い最後の語のアクセントの部分だけ調子を上げるのだが、モスクワの若者を中心に英語のようなアクセントで疑問文を言う言い方が広まっているという。そしてアラビア語圏においても、コーランや古典詩の詠唱を彷彿される演説やアナウンスの話し方はCNNの影響を受けたアルジャズィーラのアナウンサーの発音に駆逐されつつあるという。まさに「殺し屋の言語」と呼ばれるだけあって英語の浸食力は全世界に広がりつつあるようだ。

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