スナップ写真考
ストリートスナップと言えば昔は木村伊兵衛やアンリ・ブレッソン、今だと梅佳代(参照1)(参照2l)あたりが有名なのだろうか。常にカメラを持ち歩き、日常に潜む面白い光景や素敵な光景を切り取るという撮影方法は、一見簡単そうだが実はかなり難しい。人は普通、カメラを持ち歩かないし、仮に持ち歩いていても「あっ」と思ったときにはもうシャッターチャンスを逃しているからだ。それに仮にきちんと撮影できる状況だとしても今度は相手に警戒されずに写真を撮らしてもらうことが壁になる。隠し撮りと言う手も無くはないが、最近の世知辛い世の中ではそれこそ不審者として通報されることにもなりかねない。
そのせいもあるのだろう。最近のストリートスナップをとる写真家は人当たりの良い好々爺や女の人が多いようだ。それでもこうして撮った写真を公表するためには相手と交渉して承諾を得る必要があるわけで、なかなか難しいものがある。対人交渉が得意ではない自分には及びもつかない世界であるが、これこそ写真以外のスキルがものを言う世界なのかも知れない。
そんな私でもたまにはストリートスナップのまねごとをするときもある。少し前の電車の中の犬や正体不明の謎のオブジェなどを見つけたときだ。「老人と子供を対象にしたストリートスナップは卑怯者の写真」と言うフレーズもあるように、(撮るときに)抵抗できない相手を撮る行為はあまりフェアとは言えないのだが、まあこの前の写真程度なら許されるだろう。とはいえ例え被写体が意志を持たないオブジェで動かないものであっても、簡単だとは限らない。カメラを持ち歩くという行為は思ったよりも大変だし、たいてい面白いものを見つけたときに限ってカメラが手元に無いものなのだ。そのためには常に習慣としてカメラを身につけている必要があるし、(たとえそれが動かないものであっても)「あっ」と思った瞬間にはシャッターを切れるように訓練しておく必要がある。なぜならそんなときに限って、こっちが移動する車の中だったりするからだ。
それでもハード的には最近はずいぶん楽になったのだろう。いまやデジカメはどんどん小さく軽くなってる上に、全自動でピントや露出はおろか手ぶれ補正までしてくれる。願わくはこうした技術が盗撮などで悪用されることで規制されないことを願っている。(注)
注:残念ながらすでに赤外線写真、デジスコ(望遠鏡とデジカメを組み合わせることで常識を越えた倍率で撮影が出来る)などは今ではすっかり盗撮の世界でも使われるようになってしまい、良識ある本来のユーザー(天体写真家など)がとばっちりを被るようになってしまった。
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