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February 29, 2008

中国における「世論」とは(中国毒餃子事件、日本犯人説の背景を考える)

 産経新聞の報道によると中国では餃子事件の原因は日本側にあると見ている人が大半だという。そして報道ではそれを裏付けるように中国のネットの声を引用している。これに対しどのような反応を返すにせよ知っておくべき事がある。それは中国の「世論」とは何かと言うことだ。
 こうした場合、よく中国では共産党の独裁でマスコミなども全て政府の統制にあるので、中国の世論=共産党政府の方針だと言う見方がある。また一方で2chの意見が世論では無いように、ネット掲示板で騒がれていればそれが世論だと思うのはばかげていると言う見方もある。
 実はこれらは共に正しく、そして両方とも間違った見解だ。それではどこが正しくてどこが間違っているのかをこれから少し書いてみたい。

 まず最初に頭に入れておくべき事は、未だ中国ではマスコミは全て政府の統制下にあり、一定人数以上の集会も政府の届け出なしには出来ないと言う現実だ。したがってこうした点では中国に世論は成り立たない。だがそれでは中国の国民から意見や要求が上がってこないかというと、そんなことはあり得ない。どんなに弾圧されても不満や要求が高まれば生活の為にも声を上げざる終えないし、報道はされないものの地方などでは生活苦などから暴動なども起きている。だがそれだけでは広大な中国全土をまとめる「声」にはならない。そこでキーとなるのがスポーツや芸能などの人が多数集まるイベントと、急速に広まりつつあるインターネットの2つである。過去の中国の大きなデモや暴動もよく見ればこの2つが関連しているのが大半だと言うことからもそれは一目瞭然だろう。

 では何故この2つがポイントとなるのか。簡単に言えばこの2つは人が多人数集まる機会がありながら、政府の統制が効きにくいからである。
世界的なスポーツイベントであれば人が集まらないと格好がつかないので参加者に制限もかけづらく、そして外国のマスコミの目もあるので表立って大規模な弾圧や統制もかけづらい。そこに何か突発的な火種があれば(往々にして国際スポーツ競技の場合、ナショナリズムが引き金になる)暴動やそれに近い観客の争乱が発生し、しかもそれは他の争乱と違って国内外の多くのメディアが取り上げる。そして火種が大きければそれを知った人々が別の場所でも騒動を起こし、そしてそれがまた報道されると言った形で中国全土に広がっていくのだ。
インターネットの場合はこれとは事情が異なるが、政府の統制が効きづらい点では同様だ。もちろん中国のネットの検閲は世界一厳しいと言われているのも事実だが、それにもましてネットの世界ではその裏をかく手段には事欠かず、検閲とその抜け道探しががいたちごっことなってるのが実情だ。そのためネットを使える人々がハブとなりこれまで散発的に起きていた「声」が一つにまとまる動きが始まっている。そしてそれを一番恐れている中国政府はもはや弾圧するだけではなく、ある程度こうしたネット上の声を意識せざる終えない状況に置かれているのである。(参照1)

 こうした動きは一見歓迎すべき流れにも見えるだろう。ようやく一党独裁制の中国に風穴が開くかも知れないからだ。しかし厄介なのは、まだ中国には民主主義の伝統が根付いていない事である。そうした中で人々が声を上げていけば、必然的にポピュリズムに陥るし、ふとしたきっかけでナショナリズムなどの先導的なイデオロギーに走りかねない。また直接の政府批判などと違い、ナショナリズムをスローガンにした方が政府の批判を受けにくいのでそちらに走ると言う事情もある。そして危惧したとおり、中国の「世論」はこれらに染まったものが目に付くのである。
 今回の「中国毒餃子事件、日本犯人説」もまたその中の一つに過ぎないのである。

参照:中国におけるネット世論の背景とその影響については「中国動漫新人類」を参考にした。

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