「利他の心」を教え込む類のモラル教育が駄目な理由
以前も問題解決の手段として道徳教育をあげるのはいかがわしいと言うテーマで記事を書いたことがあるが、書籍『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』によるとそもそも手段として間違っていると言う。何故かと言えばモラル教育を徹底しても、その効果は人によって異なる。すると、結果としては、教育効果の薄い利己主義者たちが、「お人よし」を食いものにしてしまい、〈「徹底したモラル教育は利己主義者たちの楽園を作る〉という皮肉な結果をもたらしてしまいかねない〉からである。
なるほど言われてみればもっともだ。システムの裏付けもなければ抜け駆けしたものの勝ちとなる。ましてや社会がますます流動化し、その場の見ず知らずの人たちとやり取りする社会になればなおさらだ。こうしてみると道徳教育を声高に唱える人たちは、意図せずに利己主義者の楽園化を進めているということになるわけだ。まさに皮肉としか言えないだろう。
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