ロシアで高級品が売れるわけ
一時期は破綻したロシア経済も石油高のおかげですっかり回復し、最近は高所得層相手に高級ブランドメーカーが続々と進出し、モスクワでは豪華クルーザーの見本市すら行われている状況なのは結構知られてきたが、実は今や富豪層だけではなく庶民までもがロシアでは高級ブランドや不動産を買っているという。
こう書くといかにも成金趣味がロシアに蔓延しているように聞こえるが、実はロシアで高級品が売れる理由は別にある。ソ連崩壊時の1991年から1998年までの間に庶民はいやと言うほど、現金や国が当てにならないことを痛感させられ、いつ紙切れに変わってしまうお金より物に替えて持っておこうと思うようになったからだ。事実、90年代初めにはルーブルが紙切れ同然になったばかりか貸金庫に預けていた貴金属までも国に押収されると言う事態だったのである。
そのトラウマのせいだろう。好景気に沸く今でさえ「いずれこのバブルは崩壊する」と言う噂が尾ひれがついて「再びロシアで経済破綻が起きる」と言う話が蔓延し、今年の2月に記者会見でプーチン大統領自らが(その噂を)否定する会見をした程なのだ。
ここまで書けばわかるだろう。今、ロシアで高級品や不動産が売れているのは転売をねらっている一部の投機筋のせいもあるのだが、それよりは景気のいい今のうちに少しでも安心できる物に替えておこうという庶民の消費も大きいのである。
参考記事:トラウマにつけこんだ商法/新井 滋(NHKラジオロシア語講座2008年5月号掲載)
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