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March 28, 2009

北朝鮮の「ミサイル」に関してあまりにデマが多いので書いておく

 あまり気が進まないが、あまりにニュースの報道などを見るとデマをあおっているとしか思えないものが多いので、北朝鮮のミサイルこと人工衛星打ち上げに関して書いてみたい。


 まずこれがミサイルか人工衛星かと言う議論は実はあまり意味がない。弾頭に何を入れるかの違いだからだ(注1)。とはいえ手続き的には今回の「衛星打ち上げ」はこれまでの国際慣習に従った正当な手続きに沿っている事も留意しなくてはならない。打ち上げ予定日を告知し、あらかじめ近隣諸国に通達もしているからだ。従って日本以外の国ではほとんど「衛星打ち上げ」と報道しているのである。

 次に問題なのはこの衛星打ち上げに関してどの程度の危険性があるかと言うことだ。ニュースなどを見るとこれを将来の弾道ミサイル開発などと結びつけたりして、まるで今すぐに日本にミサイルが飛んでくるような印象を広めているが、はっきり言って今回の打ち上げは現実の脅威はほとんど無い。まずここまで公式に衛星打ち上げとして手続きを進めている以上、ミサイルとして日本に向けて発射する筈もなく、また仮に何らかの理由で日本に向かったとしても今回のロケットが衛星打ち上げようになっていれば、ペイロードは100kg強に過ぎないからだ(注2)。
なお100kgというとたいへんな重量に思えるかも知れないが、ミサイルの弾頭として見れば非常に小さいものであり、殺傷力はほとんど期待できないものである。

 そして最後の問題は今回これに対応して行われるミサイル迎撃システムの運用についてである。これも報道ではこれを口実に運用規模と予算を拡大しようとする側と、反対に中止もしくは縮小につなげたい側で様々な宣伝が行われているせいで、かえって一般の国民には実情が判らない状況になっている。
結論から書けば、今回の迎撃システムの運用は気休めに過ぎないものだ。それは北が人工衛星として打ち上げる限り、ロケットのコースはミサイルが届かない高度を中心に飛ぶものになり、迎撃するチャンスはほとんど無いからである。また仮に事故や何かで日本に落ちてくる時は、(通常のミサイルと異なる軌道をとる為に)既に手遅れになる可能性が高い上、第2防衛網であるPAC3ミサイルの迎撃範囲は半径十数キロ程度しかなく、命中して破壊しても鉄の破片が大量に落ちてくる可能性があるからだ。
とはいえこの場合でも、被害が出る可能性は低いだろう。直撃でも受けない限り周囲を破壊する能力は無い上に、発表されている軌道から見て居住地域に落ちる可能性はほとんど無いからである。


 最後にまとめるならこう言えるだろう。全ての問題に共通するように何事も絶対というものは存在しない以上、今回の打ち上げのリスクは確かに存在する。しかしその被害を完璧に防ぐことはあり得ないし、完璧を期せば帰すほどかかる費用は膨大なものになってしまう。後は起こりうるリスクに対しどこまで手間と金をかけるべきかと言うことだ。
 そうした点ではマスコミはいたずらに危機を煽るのではなく、リスクを見極めて対策にかけるコストを判断できるよう正確な情報をあげるべきだと言えるだろう。


注1:ただし日本のICBM開発の可能性について検証したときに書いたように、ミサイル向けのロケットと衛星打ち上げ用のロケットでは求められるものが異なり、簡単に弾頭を入れ替えれば済むというものではない。

注2:この100kg強と言う数字は今回の北朝鮮のロケットに準じた構造を持つ、イランの衛星打ち上げ用ロケットから推測したものである。北朝鮮とイランはミサイル開発に関しては技術交流を深めていると言われており、ともに旧ソ連のスカッドミサイルを祖先に持つロケットを開発している。


4/2追記:宇宙開発関係でいつも優れた記事を書いている松浦晋也氏がnikkei BPnetに記事を書いているのを発見した。私の適当な解説より遙かに優れた分析を行っているので、ぜひそちらも読んで欲しい。
近づく「テポドン2」打ち上げ

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