浅草飲食店事情(店舗運営編)
いつも食べる視点ばかりだが、たまには視点を変えてそれ以外の話も書いてみよう。とは言え昔、飲食店の企画やオペレーション的な事に多少触れたことはあるとはいえ、お店の立場など解るはずもない。そんな訳であくまでこの話はお店の外から見た床屋談義だと思って欲しい。
飲食店でもっとも大事なものの一つはロケーションだ。味付けや店構えなどは後から変更も出来るだろうが場所だけは変えられない。それこそ引っ越しともなればまた新しくお店を開くくらい手間と金がかかるからだ。さて、では浅草は飲食店をやる上で良い場所なのだろうか。一見、観光地で人も沢山来そうだし、意外に古くからの土地だけあって住宅地もそこそこある。そしてアサヒビールやバンダイなど結構大きい会社も周りにある。では浅草が飲食店をやる上で最適の地かと言われると正直何とも言い難い。確かに人は多いのだが結構変な癖があり意外と面倒くさそうに見えるのだ。
日頃浅草近辺で食事をしていると気づくのだが、結構客の入りが日によってバラバラなのに驚かされる。ある時は満席で入れないかと思えば、次の日はがらがらで客は自分だけと言うことも少なくない。もちろん老舗ではここまで極端では無いにせよ、やはり客の入りにばらつきがあるのは否めない。私が行きつけのどの店でもこれは悩みになってるらしく「客の入りが読めない」と皆こぼしていたものだ。
もちろんこれには観光地と言う事情は大きいだろう。元旦や花火大会といった日には、それこそ100万人以上の人が来るのに対し、平日の天気の悪い日には目立って人が少なくなる。だがお店にとってさらに厄介なのは、人出=来店者とならないのと、特に理由も見つからないのに人出にばらつきがあることだ。定期的に見ていると判るのだが、確かに平日の浅草の観光客の数は安定していない。調べれば海外や地方からのツアーや修学旅行など何らかの法則性があるのかも知れないが、同じような日でもかなり人出にばらつきがあるのだ。
保存の利かないものを仕込んでおかねばならない飲食店にとって、結構これは大変な事だろう。
ではもう一つのロケーションでの重要なポイントである出店コストはどうだろうか。超有名な観光地と言うイメージから、さぞ土地代が高いに違いないと言うイメージがあるかも知れないが、意外に浅草の物件は割安だ。もちろん大通り周辺や観光スポット周りなどは難しいかも知れないが、ちょっと離れると驚くほど割安な物件が見つかるのも浅草の特長の一つなのだ。
実はこれは店舗だけに限らない。銀座や日本橋など都心に近い利便性を持ちながら、浅草を始めとした下町エリアは人気が無く、アパートなども割安なのがここの特徴なのだ。
とは言え、じゃあ掘り出し物ばかりなのかと言うともちろんそうは問屋が卸さない。ここら辺の物件が安いのは古くからの土地で権利関係が難しく小さな区画に細分化された物件が多いためなので、結構いろんな条件が付いている場合があるし、またそうでなくても災害時の危険性が長年指摘されている。それとお店をやる上では避けて通れない隣近所(自治会)との関係も、下町だけあって結構めんどくさそうである。ただ一概にこれらはデメリットとも言い切れない。こうしたおかげで大規模資本の参入が妨げられているからこそ、まだこの土地では個人が参入できる余地が残っているとも言えるだろう。逆に大手資本が駅周辺の土地を殆ど買い占めている場所では、さまざまな理由で個人営業のお店は運営が難しくなっている。テナントが収益性第一で法外な賃料を要求したり、(大手から見て)信用力の乏しい個人商店よりも大規模チェーン店を優先するからである。また先程は否定的に書いたものの逆に言えば地元の自治会が強力なのは大きなイベントを運営したり、様々な問題を自分たちで解決していく力があるとも言えるだろう。
これらを判った上で利用出来るなら浅草は結構魅力的な場所である。
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