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October 19, 2009

日本のアニメや漫画におけるソ連について(後編)

ようやくA LOOK AT THE PORTRAYAL OF THE USSR IN JAPANESE CARTOONS"(日本の漫画・アニメにおけるソ連)の訳(もちろん意訳)が完結した。バックナンバーは以下のリンクを参照して欲しい。

日本のアニメや漫画におけるソ連について(前編)
日本のアニメや漫画におけるソ連について(中編)

(なお訳の間違い等があればコメント欄で指摘してもらえるとありがたいです。注:コメントは承認制)

(中編より続く)
すなわち古い政党のリーダー達は守銭奴のオリガリヒとなり、元KGBは貿易と投機の為に情報ネットワークを活用し、軍上層部は個人的なポストを使って私兵を編成し、堕落している国の膨大な富をくすねるための過酷な戦いから彼らの経済帝国を守ったのである。射撃の名手としてオリンピックを目指していたチャンスと軍の地位を失ったバラライカはこのような祖国の崩壊を受け入れなかった。そしてその時、ホテル・モスクワの結成は彼女に給料だけでなく、再び戦闘能力と素早い判断力がものを言う世界への抜け道を提供したのだった。彼女は(こうした)金で成り上がった犯罪者を軽蔑しているのを隠そうとはしない。バラライカは考えられるあらゆる軍事オペレーションをこなし、戦略的提携の交渉を進んでこなし、敵の勇敢さを評価する。彼女の心はまだアフガニスタンにいるのだ。

 日本のロシア大使館の後援で動いているもう一人のマフィアは池上遼一の漫画「サンクチュアリ」に登場する力に飢えた元外交官のイワン・ソロコフだろう。他の多くの元スパイが単なる私的な利益の為にKGBとのコネクションを利用するのに対し、ソコロフは祖国の力を復興させる任務で動くロビイストなのだ。彼は日本の国会議員と共謀しシベリアの大規模な天然資源の開発で相互に利益を回すために活動するが、最終的に北海道の政治コントロールを巡って主人公達と衝突する。その時、若く大志を抱いた改革者である主人公は彼を自分と対等の人間と見なすのだ。1995年にこの漫画が出たとき多くの外国人はまだロシアの楽観的な将来を描いていた。しかしロシア人自身はトンネルの先に光があることを望むほど愚かではなかった。

1993年のモスクワ争乱事件でエリツィンの強権的な命令に従い不本意ながら国会議事堂に向けて発砲した戦車は、希望を失い空腹と内輪もめにあえぐ市民の中に残っていた政治に対する希望を打ち砕いた。サンクチュアリの著者が仮定した(干からびた古いやくざの言葉で言う)「ロシア人のエリートは常にロシアは超大国でなくてはならないと思っている」と言う主張は現実のロシアの強欲なエリート達の(ロシアを大国にするどころか国益すら考えない)行動を見てると滑稽にすら見えてしまうのは皮肉な事だ。
ソ連崩壊後の混乱が続き結局ロシアが破綻国家になってしまった事からも、それ(当時、ロシアを大国に再建しようと言う理念を持った政治家はいなかったの)は証明されるだろう。もし90年代にこの作品に登場するような理念をもった政治家が何人かいたならば少なくとも今のロシア状況はもう少しましだったに違いない。(訳者注:ロシアを建て直したと言われるプーチンが大統領になったのは2000年になってからである)

ロシアが弱体化したことで「赤い脅威」の役割は中国に引き継がれた。全体主義のプロパガンダの公式な守護者の役割や赤と黄色の配色、角張った機械類と言った(過去ソ連の記号として使われた)ものは今や中国のものなのだ。最近になってそれをもっともインパクトのある形で見せてくれたのが「ガンダム00」である。この中でユーラシア大陸の国々ブロックを構成している中心は中国であってロシアではない(作品中でロシアは2つに分裂してしまっている)。そしてそれは灰色の髪を持つベテランパイロット、セルゲイ・スミルノフにおいても明らかだろう(20年前だったら彼は上記のソ連の記号をまとっていたに違いない)(訳者注:この部分の訳は自信がない)。その代わりにソ連からインスパイアされたイメージは目眩がするほどごちゃ混ぜになって「速水螺旋人の馬車馬大作戦」の中に登場する皿のような目をした萌える情報部のヒロインやエルフのような耳をした潜水艦の司令官(ナースチャ少佐の事か?)などと共に登場するのだ。ソ連の遺産は伝説的な技術やエキゾチックなイメージの豊富な土壌として歴史にとりつかれた漫画家によって略奪される表面的なイメージとしてしか残ってないのはもはや避けられない事なのだろう。

ニューヨーク在住のクリエーターと実験的なアニメーション制作会社スタジオ4°Cとの前例の無いパートナーシップの結果、二人のロシア人アーティストによるソ連の伝説に国際的な評価をもたらそうとする宣言は長編アニメーション「First Squad」として実を結んだ。2005年以降に出る作品は国際映画祭の候補にあがっている。(訳者注:その後この作品は2009年にモスクワ国際映画賞を受賞した)そして10月15日にはロシアでDVDのリリースが予定されているが、それを手に入れて見る機会があれば直ぐにレビューを投下するつもりである。(訳者注:Colony Drop reviewってなんだ?)

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