書評:ドレスを着た通信士 マ・カイリー
松浦さんのTwitterの書評で知って購入したこの本は噂通り「当たり」の本だった。
19世紀末のアメリカは実は電信によって情報通信の新時代が始まった時代でもあった。そんな時代に、この技術をものにして電鍵ひとつを相棒にアメリカを放浪したタフレディの物語なのだから面白いに決まっている。
ここに書かれている事は専門職で食べている人間なら誰しも見聞きしたような話に満ちている。当時まだ男尊女卑が残っている中で、高度なスキルと度胸で渡っていくヒロインの軌跡は読んでいてわくわくする冒険だ。そして著者は電信士を「現在のプログラマやSEといったITエンジニアの先駆け」と表現するが、確かに当時の電信技師の世界がまるで今のインターネットの世界のようなのも面白い。通信士同士はスキルによって評価され、互いに何かあると電信を使ってチャットをし喧嘩をしたり助け合ったりするのである。
この本で難点があるとしたらそれは本自体よりもおいてある書店が少ないことだろう。だがたとえ取り寄せてでもこの本は読む価値があると思うのだ。
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