「ソ連/ロシア巡洋艦建造史」を購入した
雑誌「世界の艦船」別冊のアンドレイ・V・ポルトフ氏の「ソ連/ロシア巡洋艦建造史」を購入した。
その手のものが好きな人以外には興味が無いとは思うが、いくつか万人受けしそうな面白そうなところと興味深い部分を上げてみたい。
ソ連末期に作られたスラヴァ級はアメリカの空母艦隊の防空圏の外から核弾頭付き対艦ミサイルを撃ち込んでそれを無力化すると言う方針で作られたミサイル巡洋艦だが、恐ろしく強力な攻撃力を備え(何せ通常弾頭でも戦艦大和を一発で沈められるミサイルや魚雷を山のように搭載しているのだ)かつ巨大なサイズを誇る巡洋艦である。
だが大きくなると建造費もかかるし維持運用するのにも膨大な手間と金がかかってしまう。そんな訳で巨大兵器というのは得てして歓迎されない物なのだ。
ところがとにかくソ連・ロシアの軍艦は巨大兵器が多かった。これには様々な理由があるが、最大の理由は軍部が技術上の問題を無視した要求に答えるため、設計官や製造者が勝手に重量やサイズを拡大したために大きくなったと言う事情がある。
ところが現場の開発者達がこうした無茶な要求で困ったかと言えばどうもそんな事は無いらしい。彼らは冷戦時に軍事費が聖域化されて自由に予算が使えるのを良い事に嬉々としてこれらの巨大兵器を作り、また軍やそれに関わる軍事産業の人間もこれで予算が増える事もあり、皆大いに喜んでいたという。
この下りがどうにもマッドサイエンティスト的だと思ってしまう。
ところでスラヴァ級に搭載された巨大対艦ミサイルだが射程1000kmにも及ぶ為、誘導には偵察衛星・偵察機・レーダー基地などを含むウスペク型(後にレジェンダ型)と呼ばれる総合誘導システムが必要な実に大がかりなものだった。ミサイルを使うために地球全域に及ぶ衛星網が構築され、常にアメリカの空母艦隊の位置が監視され、いざと言うときはその情報を元にはるか遠方からミサイルが誘導されるのである。
こうして書くと実に大がかりなシステムに見えるし、事実ソ連崩壊の一因はこうした巨大なインフラの維持費にもあるのだが、実は今や軍に限らず多くのインフラはこうした地球規模の大がかりな物になっているのを知ってるだろうか。
一番象徴的なのは携帯電話で、今や多くの機種に搭載されているGPSは地球全域を取り囲む30個あまりもの衛星を使って位置を割り出し、通話やネットも海底ケーブルや衛星網を使って行われる。いまや我々の日常生活は冷戦時代の米ソもかくやという地球規模の大がかりなシステムに寄って支えられているのが現状だ。
旧ソ連はこうしたインフラを結局は維持しきれなかったが、果たして我々の生活を支えるインフラは維持しきれるのだろうか。
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