書評:閉じこもるインターネット
もういろんな所で話題になっているので今更取り上げる必要は無いのかも知れないが、余りに面白くそして多くの人にも読んで欲しいのであえてここでも取り上げる。多くの人が既に書評や紹介記事を書いているようだが、自分がこの本を紹介するのに最も適切だと思うエピソードが丁度冒頭に書かれていたのでそれを一部引用したい。
グーグルの検索はだれに対しても同じ結果を返してくれると思う人が多い。(中略)2009年12月以降は違う。いま、返ってくる検索結果はあなたにぴったりだとグーグルのアルゴリズムが推測したものであり、他の人はまったく違う結果になっている可能性がある。規格品のグーグルというものはなくなったのだ。(略)本書の前半では著者が当初、インターネットによって社会全体の民主化が進み一部の人間に独占された情報はオープンになり、多くの人々が低いコストで社会に情報を発信できることで特定の利権団体の影響を受けずに政治はより市民の声が反映されたものになり、人々が互いにネットで結びつくことでより社会の協力は強まり住みやすい社会が実現出来ると言うビジョンを持っていたと語っているのも興味深い。こうした意見は今でもネットの正の面を語る声としてしばしば目にするからだ。
パーソナライズされたグーグルで「幹細胞」を検索した場合、幹細胞研究を支持する研究者と反対する活動家ではまったく違う結果になるかも知れない。(略)調べ物をするとき、ほとんどの人は検索エンジンを普遍だと考える。でも、そう思うのは、自分の主義主張へと少しずつ検索エンジンがすり寄っているからなのかも知れない。
だが現実にはそうはなってない。ネットでも炎上騒動や互いのセクトに別れて批判合戦をやっているのはしばしば目にするし、SNSの様なコミュニティーでは似たもの同士で固められていく。
本書では最近のインターネットで起きている流れで特にこの「パーソナライズ」に焦点を当てて考察している。「それがいつどういった流れで起きてきたのか。それによって何が起こるのか。問題点はどんなことでどうすればそれを回避できるのか。」もちろんその答えが全て書かれている訳ではないが、こうした事に少しでも関心があれば読んでみて決して損はしない内容だと思う。
関連Link:訳者の井口耕二氏の紹介記事。より突っ込んで本の内容が紹介されている。
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