自家製パンの酵母の話
長年の試行錯誤のすえ、最近ようやく美味しいライ麦パンが焼けるようになってきた。そこで試行錯誤際に知った小麦粉や酵母の話を書いてみたい。
それにしても食べ物について書くのは難しいと思う。「美味しい」や「健康にいい」と言うフレーズは耳当たりはいいものの、どうしても主観が入るせいなのか、いつの間にかニセ科学まがいの説明になってしまう事が多いからだ。特にパンの場合では天然酵母を使うケースはちょっとググると怪しげな解釈に満ちている。だからと言って天然酵母を使うのは意味が無いと言うつもりはない。実際、自分がパンを焼くときも天然酵母を使っているし、たしかにこちらのほうが美味いのだ。
実は酵母といっても様々な種類があり、しかも系統的にも違う種類が混ざっている。その中で特にパンの生成に向いている種類を選別して培養したものが所謂イーストとして売られている訳だが、パンに向いているとは言えどんなパンでも美味しく作れる訳ではない。日本酒やワインが各蔵やワイナリー毎に自前の酵母を使って味の違いを出している様に、パンもまた酵母によって味が変わる。市販のドライイーストではその中で最も多くの人の好みに合った、(パンを焼くのに)失敗しにくい種類が選ばれている訳だが、当然ながら数多くの酵母の中には扱いは難しいものの美味しいパンが作れるものや、美味しいもののちょっと癖があるものも存在する(筈だ)。
とは言え残念ながら普通はパンに合わせて特性の違う酵母を用意するなどという事は出来ないし、そもそも何処で手に入れられるかも判らない。そこで出来る事としていくつかのメーカーのドライイーストを使い分けたり、自家製酵母を使うことになるわけだ。
たまたま自分の場合では「有機穀物で作った天然酵母」と言うベタな名前のものを使っているが、これを選んだのはたまたま行きつけのお店に置いてあったのと、天然酵母ながらドライイーストタイプと言う安直さに引かれたからで別に大した理由はない。だが、これが意外にも当たりだった。明らかにこれまで使っていたドライイーストよりも美味しいのだ。元々、自分がパンを焼く時に使っている小麦粉の一つリスドォルが長時間発酵させたほうが美味しいと言われている種類だったせいなのかも知れないが、いつもと同じ分量の砂糖(自分の場合ではハチミツで代用)を入れている筈なのに明らかに甘みが増している感じがするのだ。そして気のせいかも知れないが風味もいい。
まあ酵母によって醗酵の際に作る有機酸の種類は違うそうだし、醗酵の為には澱粉を糖化させるのだが、そのペースや割合も種類によって違うから、案外そうした理由もあるのだろう。
そんな訳で最近は別に健康や安全にさしたるこだわりが無いにも関わらず、いつの間にか天然酵母パンばかりを食べている。
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